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大きな志で、共同的な進め方で、
「理科好き」の大人と子どもを増やす雑誌に
編集長 左巻健男
 私は、小学生のころ、学校から帰るとランドセルを家に放り投げて、川や山に 遊びに行ったものだ。採った魚や貝、キノコなどは夕食のおかずになった。地域 でメンコやベーゴマにも興じた。経済的には貧しかったが、いつも毎日が輝いて いた。「今日は何がおこるんだろう?」というわくわくとした好奇心をもって、 日々を過ごした。
 冒険小説や未知の世界を解説する書物を読んでは想像をふくらませていた。学 校の成績はひどいものだったが、探検心や冒険心をもっていたいたずら好きの子 どもだった。
 大人になるということは子ども時代の好奇心を失うことなのか。若いときに、 回りの大人を見ながら思った。大人になっても好奇心をもっていたいという気持 ちで、私は理科の教員になった。50代後半になるというのに、今も、私を駆り立 てるものがある。
 そういう私に、「理科の雑誌の編集長をやりませんか」という依頼が来た。結 構、忙しい生活を送っているのに、雑誌を創刊するという「未知への冒険心」が かき立てられてしまった。
 どうせつくるなら、私の抱いていた「こんな雑誌なら出したい」という志を込 めた雑誌にしようと思った。
 まず、学校の教師向けの単なる理科教育の雑誌ではない雑誌にしよう。もっと ずっと広く理科の楽しさ、おもしろさを伝える雑誌、社会・家庭と学校をつない で市民の科学リテラシー(科学の常識、科学を読み解く能力)育成と学校の理科 教育の活性化を共にすすめていこうという雑誌である。それを、ネット時代にふ さわしい形でやろうと思った。
 ネットを通して、「一緒につくりませんか!」という呼びかけにまたたく間に 百人を超える賛同者(企画委員)が集まった。その顔ぶれは、現役教師、科学の 研究をしている専門家、理科教育の専門家、実験教室など科学ボランティアをし ている人、主婦、TV/雑誌に活躍している人、出版関係者、理科教材販売者 他、実に多彩である。理科好きを増やしたいと思う人たちが立ち上がったのである。 既存の組織に寄りかかるのではなく、こうした草の根の人びとの気持ちを集め て、雑誌は創刊されたのだ。
 伝統がないことはいつでも内容を柔軟に改善していけるということだ。 基本の「観る・知る・ 遊ぶ」…理科や自然の広い範囲の楽しさ発見!理科の探 検!というコンセプトは変更しないが、冒険的な心をもって各号の内容を展開し ていきたい。
 読者との交流のメーリングリストも準備中だ。公開企画委員会、読者の会など も開いていきたい。
 未だよちよち歩きの新雑誌だが、企画委員と読者のみなさんに支えられなが ら、厳しい出版事情の中、理科好きを増やしたい人びとの中にしっかりと根を下 ろしたいと願っている。
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